8/26

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陽の光を遮るものが何も無い谷合の高い場所にお義父さんは眠っている。お義父さんの三回忌。
あれだけ日照日の少なかった夏なのに、今日に限ってお日様が猛烈に張り切っていた。
お坊さんにお墓の前で読経をしていただいているあいだ、神妙にしているがジリジリと鉄板の上で焼かれるイカのような気分になる。ぷつぷつ珠のような汗をかき次第に夕立にあったように全身びっしょりの汗をかいた。お義父さんも暑かろうと思い墓石に何杯も何杯も柄杓で水を掛けた。墓参後、境内の鐘楼の庇の陰で休んだ。汗をかき慣れていない妻とお義母さんは一時的に熱中症なったようでぼんやりしていた。境内の隅の石垣から樋が突き出ていて水が流れ落ちている。その水を受ける手水の中では小さな鳥が気持ちよさそうに水浴びをしていた。今年夏らしいことが何もなかったなかで、跳ねる水飛沫の光がだけが夏らしく思えた。

# by koyamamasayoshi | 2021-08-26 20:45 | 日記

8/25


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背筋がひやっとするような山の霊気を心身共に欲している。今日夜勤終わりに高尾山に登った。
朝4時半、街灯が寂しく灯る沢づたいの6号路を進む。まだ日の出前の暗がりの道を歩くと前方の樹々の隙間から提灯の灯明のようなぼんやりした灯りが見える。
そこは高尾山の行場で、穿かれた岩場の内側にお地蔵様がお祀りされている。日中でも薄気味悪い水辺の行場は、闇夜ならいっそう寒気がしてくる。
目に見えない霊が滝に打たれたり、岩場の中でお経を唱えたり、水辺の灯りに寄り集った彼らのざわめきが聞こえてきそうだ。
心は怯えながらも、深呼吸をして身体中に霊気を取り入れる。
じきに街灯が無くなり山道は険しくなる。頼りない懐中電灯の灯りの先にいまにも何か恐ろしいものが現れるのではないかと想像する。沢を右に左に縫うように登っていくその先々の水辺の中に、真っ白の裸の女がぴちゃりぴちゃりと水を浴びてやしないだろうか。人ひとりが通る狭い山道の左右両側から迫った茂みの中から真っ白い腕が何本もにょろにょろ生えてきて茂みの中に引っ張り込まれないだろうか。頭上に伸びた巨樹に3m以上の大天狗が一本歯の下駄で止まり、メキメキと巨樹を揺らして脅かすのではないだろうか…。
ひぐらしの鳴き声と沢の水辺の音だけが山中に充満し、登り始めて20分もたたないうちに俗世を遠く引き離して隔絶している。狭い山道を一筋のクモの糸が絶え間なく遮り、顔に纏わり付いた糸をほどくように手でひらひら払い続けた。傍目から見れば山道で阿波踊りの手振りをするおかしなやつに見えたかもしれない。
山頂まで半分くらいのところで初めて2人の青年とすれ違った。そのあたりで夜が明け空が白み出した。ヒグラシの鳴き声からツクツク法師の鳴き声に変わり山の霊気が徐々に薄らいでいくように感じた。稲荷山コースと合流すると赤い土塊の道に変わる。
周りの樹々から寝起きのガビチョウが騒がしく鳴き出した。その声に混じってギュッギュッと哺乳類の啼き声が聴こえたのでその先をたどって見るとムササビが飛び立った。
長い階段に息が上がりその先で山頂に到達した。遠くの山々の上には、のたうつ龍のような黒雲がうねり暴れてとぐろを巻き、どーっと大気を薙ぎ払う音が響いている。一息つきながら茫然とその黒雲の流れるさまを眺めた。山頂には何かを咥えたカラスが二羽とパラリンピックのオブジェだけが朝日を浴びていた。
薬王院に向かって下る。

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早朝の神社を参詣すると静かな境内に朝勤行をする祝詞の声が聞こえた。お寺にお参りする頃には、1号路を登ってきたと思しき登山者がぽつぽつ登ってきた。時世柄挨拶しようか迷っていると向こうから明るい声で挨拶された。お寺の本堂では護摩行をされていた。回廊の空いた扉の隙間から護摩行の炎の揺めきに見惚れ、線香と護摩木が燃える匂いを胸いっぱい吸い込み、心が落ち着いた。
石畳の山道を下山している先の方から、にゃにゃんと喚きながら鯖トラの山の猫が駆けてくる。屈んで呼び寄せると近づいてきた鯖トラの尻尾は山伏の胸に付いているポンポンのようなまるっとした短いものだった。もしや山伏の生まれ変わりなのかな。
1号路を駆けて下山する。お山から霊気をわけていただき身体の器にひたひたに満たすことができたような気がする。
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# by koyamamasayoshi | 2021-08-25 08:28 | 日記

8/24

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川沿いの茂みの中を歩いている夢を見た。行く先の茂みの中に大蛇が居たのでそっと引き返したが、引き返した先にも別の大蛇が居たので立ちすくんでしまった。大蛇はこちらの気配に気付き、瞬間大蛇の身体が紫色に発光してぐにょんぐにょんと伸び縮みした。そしてするするっとものすごい勢いで逃げていった。行く先々で大蛇に遭遇したがすべて同じように逃げていった。
# by koyamamasayoshi | 2021-08-24 22:28 | 日記

8/23

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長い夢の一部分。少年を連れて逃避行をしている。真夜中の山道を歩き続け峠を下ると、大きな日本家屋が目の前に現れた。懐かしい波波の歪んだ窓ガラスから煌々と裸電球の灯りが溢れている。建物を玄関の方にぐるり回ってみると、広い土間に何人かの村人が影絵のように静かに作業をしている。その真ん中に大きな円形の水槽がある。水槽の中央にはアームがありアームの先端には袋が付いている。水槽の中には子象が入っていて、しばらくすると子象がその袋の中へ下半身をすっぽり入れた。アームが動き出し、子象を乗せた袋が波紋を引きながらぐるぐると水槽の中を回った。メリーゴーランドのようだと少年と一緒に見惚れた。
# by koyamamasayoshi | 2021-08-23 20:59 | 日記

8/22

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帽子を被った自画像。

# by koyamamasayoshi | 2021-08-22 19:38 | 日記


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