2022/5/28
昼前にバスに乗って出掛けた。その京八行きバスは異常に混んでいた。
電車で出かけた方が早かった。京八前のベトナム料理屋に入る。
わたしはピリ辛の牛肉フォーを食べ、妻はつけ麺のようなものを食べた。
ここの料理はとても美味しかった。
八王子駅前のバスターミナルから、創価大循環バスに乗って富士美術館に行く。
現在、旅の風景という企画展が開催中で、北斎、広重、巴水、吉田博らの作品が並んだ。
ずば抜けて広重の画面の構成、デザインセンスが心地よい。
常設展もついでに見る。キリコの絵が常設として掛けてあるのには、とても驚いた。
また、最近特に近代の彫刻に関心があるため、ブールデルの「弓引くヘラクレス」の像にはこころ惹かれた。
今日はたいへん暑く、30c°を超えていたかもしれない。
バスに乗って八王子に戻り、放射線通りでアートフェアがやっていたので寄ってみた。とくに買うべきものはなかった。そのかわりバナナジューススタンドで、ジュースを買い火照ったカラダを癒した。
妻が日傘を美術館に置き忘れてきた事に気付くも、明日取りに行く事にしてバスで帰る。
バスを降りたところで、自転車に乗った女性のスカートの裾が翻って、白い太腿が輝いて露わになった。
熱を持った体を休めているうちにそのまま眠った。
2022/5/26
名前というものについて考えている。春に体調を崩してから黙々と文章を書いている。
まだまだ拙い小説だ。次々に短編のアイデアを思いつき、ゆるゆると書き進めている。
そこで思うのは名前だ。架空の人物に何故名前をつけるのかという疑問が沸くのだ。
ある男とか、この少女とか、うす汚ない老婆とかで済むのならそれでも良いし、わざわざ名前をつけることで何か面白いことが起こるのなら付けても良いと思う。
今日午前に電車を乗り継いで根津神社に参詣し、厄除けの御祈祷をしてもらった。
その時に、祝詞の中で呼ばれたわたしの名前が、妙に地面から浮いたように感じたのだ。
仏なら俗名のこの名前は、親から最初にもらったプレゼントなので大事にするのだが、
人の名というのはその生命を縛る縄であり、囲う枠であるような気もする。
帰りの御茶ノ水駅ホームで電車を待ち、目の前のコンクリート壁の上に、石ころがいくつも転がっているのが見えた。
わたしの名は「石ころ」なら「石ころ」でも良いのだ。と、思い眺めていた。
そう思うと隣で立っている男も、電車の中ですし詰めの群衆も"石"で良いのだ。
名前というのは呪縛する鎖であると同時に、理性を保つ知恵かもしれない。
もし仮に名前がなかったら、昆虫や動物、植物の世界と同じ、死屍累々の生存競争が始まるのか。
それならそれでその中に生きても良いかもしれない。どういう事になるのか果てまで知る由はないのだけども。
北斎の娘のような「応為(おうい)」って名前ばかりになるのだろうか。
おういで思い出したのは、帰省している時、故郷の母がわたしを遠くから呼ぶ時に「おい」という。それが犬を呼ぶようで嫌だなと思っていた。わたしはじいちゃんばあちゃん子だったので聞き馴染みのある「ほい」に変えてくれと言ったことがあるが、まったく変えようとしない。
まあ、名前というものは、あってもなくても大して変わらないもののように思える時が時々ある。
2022/5/25
朝、島田でお世話になった方から川根の新茶をいただいたので御礼の葉書を書く。
午過ぎに関内に出掛ける。
電車の中でMoon light scoreのスジを考えていた。
(*のちに燈歌譜という題名に変更した小説)
ラストの部分を考えていたら思わず、自分でも泣けてきてしょうがなかった。
その描写が上手に書けたら、かなり良い文章になりそうだ。
シネマリンの近くの床屋で髪を切ってもらう。寿光というもっと老舗の床屋でやってもらっても面白かったかもしれない。
16:20上映作品、エンギズ・アブラゼ監督の「祈り」三部作中の残りの「希望の樹」を観る。アブラゼ監督はどうも黒澤映画にかなり影響を受けているように思われた。
本作はジョージアの作家の幼少体験などから構成されたオムニバス映画になっていて、「どですがでん」の構造にとても良く似ていた。
さて映画はかなり良かった。
誰もが被害者なのだ。
閉鎖的な悪しき因習を批難する狂人、オバケのように化粧をしているがかつては美しかった老婆、若い溌剌とした恋人たち。
生きづらさ息苦しさが充満する村にいて、批難はするものの彼らはそこから立ち去ることをしない。土地に受け継がれた因習に固執する長老や有力者たちは、高みからその権力を振るうのではなく、故郷を守るために手を血で染めている。かれらも彼らで苦悩に満ちた顔をしている。
アブラゼ監督の映画を見ると特徴的なのは、ただ権力や体制に抗おうという姿勢だけではなく、
このどうしようもない人間という生物を両面から描くことが出来る、全く稀有な表現者であることがわかる。
それはニュートラルということではなく、或るおおきな命題にむかって全身全霊で挑んだ痕跡が画面に、あるいは画面の裏側に観て感じられる。
いろんな見方が有るだろうが、わたしはプペラという厚化粧の老婆の目を通してこの映画を最後まで観ていた。
2022/5/17
深夜清掃から帰り、朝6時半今日もまた関内へ出掛ける。
早朝の横浜線ホーム上に、長身のナイスボディの栗毛美女が佇む。
横浜線車中ではグースカ眠った。東神奈川駅で京浜東北線に乗り換え関内駅で降りる。
駅前のモスバーガーで朝食を摂る。幹線道路沿いに面した大きなガラス窓の席に座り、早朝の通勤の人がせわしなく流れるのを見ながらバーガーを食べた。
シネマリンの開場まで時間があるので、夜明けの伊勢崎町の繁華街を歩く。東京とは違う猥雑な雰囲気とカラスが撒き散らした乱れたゴミの掃き溜めがそこここにある。とにかくハエがぶんぶんと汚らしい。
開場し、本日のジョージア映画の3本分まとめてチケットを買う。
1本目はミヘイルコバヒゼ監督の短編が3本と別の監督の短編が1本上映された。
途方もなく中身のない内容。それでいてとても些細なことに心を動かす登場人物の、動物的感性が美しい。ジョージア人の、鼻に頭が乗ったような真面目な顔と、ちょっとすると白痴そうな美しい女性の顔が、コメディー向きではないように思えて、そのアンバランスなミスマッチが笑いを誘った。
2本目はピロスマニのドキュメンタリーと、パラジャーノフのアラベスク。
退屈極まる映画。ピカソがピロスマニに関心を寄せたという本編での解説がなされた段階で、ああこれはつまらんかもと予感した。ピロスマニの虚像を実像として祀りあげてるなあという強烈な印象。
ピロスマニの描いた絵が当時の酒場や宿の壁にあったから良いものを、それらを剥がして美術館の壁にかけた時、すべてが谷底にむかってガラガラと崩れ落ちるようなものだと思う。
パラジャーノフは予感通り、大したことはなかった。寺山修司的な実験映像に嫌悪感を抱いた。
3本目はもはやどうでも良くなって、観ないで雨の中関内駅まで歩いて家に帰った。
2022/5/16
昨日観たテンギズ・アブラゼ作品が頭にこびりついて忘れられない。
作品を制作したいという骨太な原動力が、自分のなかに漲るのを感じた。
昨日は猛烈に眠ったので、朝7時にはすっかり目が冴えて、
それこそ豚のようにガツガツと朝食を食べた。そのため腹回りが少し重い。
朝食を摂りながら、前田日明のRINGS時代の動画を観た。高校生の時に観ていたカレリン戦が改めてとても新鮮にみえた。
午後夕方にかけて小説を書き進めた。文章を生み出す苦労はあるが少しずつ書くことが楽しくなってきた。
夕方、妻と近所を散歩する。お互い同じ映画を観たことで、映画のこと、宗教のことなど歩きながら話をした。帰りにストアーで青島ビールを買い、明日に控えて飲んで眠った。
夢の中で大学浪人時代に切磋琢磨した、仲間がでてきた。近い年齢で兄妹のような関係だった気もするし、戦友のような気もする。結婚をして幸せになっているだろうか。余計なお世話だろうが、幸福であることを切に願う。
22時半遅めの夕食を摂り、23時深夜清掃に出掛ける。
とにかく文章を書くことにのってきているので、この調子にのってどんどん書きたいと思う。
小山真徳 展覧会情報
by Koyama Shintoku
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