4月11日

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午前中、芸大美術館で開催中の展覧会を見に行く。
芸大美術館とボストン美術館の幕末明治期の所蔵品で構成されている。
由一、義松の以前より関心がある作品を見るなかで、文明開化後の西洋式の建物や議会の様子などを描いた錦絵はどれもつまらないなあと感じた。美術というよりもまず報道であり、色が押し並べていやらしい色で描かれている。
体制に対するこなくそと言う気持ちや粋とかいなせとか色気なんかを文明開化の時に置いてきちゃったのかなと感じながら観て流れると、次の壁に小林清親の版画が出てきて、よかった情緒は失わなかったと、さもタイムトラベルでもしている様に展覧会を観た。

新宿に移動してタイ料理屋で昼食をとった。ビル2階か3階の店舗、窓際自分の席から歩行者専用道路と靖国通りがみえる。
目の前の街路樹に2羽のカラスが嘴を使って小枝を折り取っている。きっと巣作りの為だろう。
欲張りで横着なのか3本くらい一気に銜えて持って行きたいらしい。一本二本銜えたまま次のを取ろうとしているので「それは無理だろう」と思いながらその光景を眺めた。心配した通り全部落っことしていた。思い直したのか一本一本運んでいる。
食事を終えて妻が食べ終えるのを待ちながら、靖国通りに路駐している車をなにげに眺めた。
後部座席のドアが開いていてその車の側に2人の男が立っている。ひとりは車内に居るであろう人物と話しているらしかった。もうひとりは手持ち無沙汰に煙草を吸っている。
その人物の煙草の吸い方が気になり、じっと見ていた。
煙草を親指と人差し指でつまんで持ち、忙しく吸って吐いて、「煙草の火を見る」を繰り返している。その一連の動作が6、7秒でそれをフィルターがちびるまで続けている。火を見るときは手首を返して掌を顔にむける形で煙草の火を見ている。
その姿ははじめ踊っているようで、煙を噴く機械ロボットにもみえて奇妙に映った。
自分は人差し指と中指に挟んで吸うが、あれほど忙しく吸わない。ただ親指と人差し指で吸う人に対して憧れみたいなものがある。人によってはセコい吸い方に見えるが人によっては断然かっこいい。

紀伊国屋書店1FのDVD店に寄って、前から欲しかった今井正監督の「米」を手に入れた。帰って直ぐ観たがとてもよかった。
映像の色は昔の絵はがきのような彩色で今まで観た事が無く、これが総天然色というものかナと新鮮だった。霞ヶ浦に生活する人々を丁寧に捉えていて、風俗文化資料としても大変貴重だと思った。
# by koyamamasayoshi | 2015-04-16 01:58 | 日記

風景の断片 夢の記憶

風景の断片 夢の記憶_a0232906_1532583.jpg
3/20~22高知徳島を旅をした。
帰路土讃線で高知ー坂出まで行く予定を阿波池田で下車し町並みを見て歩く。靴のかかとが斜めに欠けていて旅中足が痛かったので靴屋で足袋を買う。
徳島線で徳島まで廻って帰ることに変更。徳島線の車窓、吉野川に沿って進み田んぼが目につくようになってあることに気付く。
田んぼの真ん中にお墓がある。水田の中央にぽつんと一基あるものや、5、6基が並んだお墓が田んぼの中ある。
畦にお墓があるのはさほど珍しいと思わないが、水田のど真ん中に一基あることはそこに意味があると感じた。


一ヶ月前に夢を見て、これは何回も見てきた夢で名作の夢(という印象)だった。
夢うつつと目覚める前の狭間で妻に夢の内容を伝えようとするがどんどん記憶が消えて行く。
例えば、具体的な形をした濃縮した霧が手で触れた瞬間にまったく消え失せそれがあった記憶もなくなっている。
砂で象られた具体的な形を手で触れようとした瞬間に跡形も無く記憶と一緒に吹き飛んでしまったように、手がかりが触れようとしたものから断ち切られてゆく。記憶の欠片すら拾えない。
結局何一つ言葉にできなくていい夢をみたという印象しか残らなかった。
この夢を記憶に引っ掛けたいが方法がわからない。
# by koyamamasayoshi | 2015-03-29 14:01 | 日記

12月13日

8時台の電車で、妻とお義母さんと共に高松へ向かう。新幹線バラバラの指定席のため昨日買った本を読みながら過ごし、13時半ごろ岡山に着く。目的の高松の展示を翌日に回し、のんびり観光の流れになった。14時の特急南風宿毛行きに乗り換える。瀬戸大橋中程から強烈な西日をまともに受けて、他の乗客はカーテンを一斉に閉めた様だが、ふたりは車窓に流れる景色に向けて夢中でシャッターを切っていた。その横で帽子を沢田研二のように斜めにかぶってふたりの嬉々とした表情をのぞき見た。15時琴平駅下車、金比羅さんへお参り。学生ごろから4、5度お参り兼取材に来ているため、町の一風景を切り取った作品を幾つか作っている。そのモチーフになったブッタイが未だ変わらずの状態で残っていることには「お久しぶりですっ!」という挨拶が漏れてしまうくらい興奮する。ふたりは初めて来たようで後方で楽しそうにシャッターを切りまくっている。俺は「お久しぶりです!お久しぶりです!」と心でつぶやきながらズンズン歩いた。
金比羅さん中腹の円山応挙の障壁画のある書院に初めて入る。ごくごく最近になって日本庭園やそこにお似合いの日本建築に興味を抱きはじめたので、行き届いた庭園管理や建物の部材に自然と注目した。残念ながら伊藤若冲の障壁画は2週間前までは特別に見る機会があったとのことで、妻は悲しそうであった。石段を下り左手に高橋由一館がある。ここへは2、3度入っている、由一好きの自分は、2人が由一の凄さに気付いてくれたことが嬉しかった。
16時半過ぎ参道を下り始めると蛍のひかりが聴こえてくるようなムードに、参道両脇のシャッターが一斉に下がり出す。参道を下りきり直進し橋を渡るとアーケード入り口に総菜屋がある。そこの揚げ物がむちゃくちゃ美味い。しかし寄って行ってみると15人ぐらいの観光のおばちゃんが注文を待っていて店内に密集している。さすがにあきらめて琴電に乗車し今晩の宿に向かう。二人は車窓の火灯し頃の風景に向かってシャッターを切っていた。その肩越しを観覧車の灯りが数珠のように発光し夕闇に浮かび、去って行った。今日の〆にいい光景だった。
# by koyamamasayoshi | 2014-12-17 02:59 | 日記

12月12日 

渡辺篤個展へ行く
新宿で電車を降り、御苑脇の模索舎で本を買う。「黒子のバスケ」脅迫事件の獄中手記、柳田邦男の禁忌習俗事典。山手線で渋谷乗り換え、田園都市線で一駅池尻大橋で降りる。大学の先輩でNANJO HOUSEで個展をしている渡辺篤の「止まった部屋 動き出した家」を見に行く。本を買った為財布には1000円一枚のみ。行きしなにあるコンビニで缶ビール2本とナッツを買い差し入れとした。事前予約制の展示の為予約時間の5分前に到着した。会場内に響くノコを挽く音と、全面セメントで塗込められた家がある。そしてその家は傾いている。作品解説を訊くとナベさんは初日の7日からその家にひきこもり外界との接触を断っておるという事だった。押し入れほど広くない密室で、さほど多くないであろう飲食料と4ヶ所の通気口、人工灯とノートpcが生命線となっている。中の様子は伺い知れないが、センサーで、中に動きがあるときは家上部に吊るされたライトが灯っている。
差し入れを持参した自分が恥ずかしくなった。そんなところで戦ってないのだ。
夏頃、浅草橋と秋葉原の中間地でやっていた氏の「ヨセナベ展」には感じられなかった張りつめた空気、差し迫った空気を今回の展示で感じ、寒気がするほどだった。
自身を密室に閉じ込める行為を作品にしたものが過去にあったのは知っているが、それは身体性に寄るところが大きく、それは「ひきこもり」ではないだろう。
自分にはひきこもり当事者の心情はわからない。わからないがタヂカラオが強引にひきずり出そうとしてもアメノウズメが裸で躍っても、届かない深い闇に沈んだ難しい問題なんだと思う。
作品詳細テキストの一文に「自身のタイミングでカナヅチとノミを使い、扉型の壁を割って外に出る」とある。この自身のタイミングでという部分にとてもメッセージ性を感じる。
セメントで塗込められた傾いた家は、震災の津波で流される様を表現している様にみてとれ、展示会場の灰色の床にプカプカと浮いているように見えた。それは映画今村昌平の「人類学入門」、主人公スブやんが川上に繋いだダッチワイフ研究所のオンボロ小屋が、研究に没頭するあまり流されているのに気付かず大海原に出るエンディングのシーンに重なって見えた。何故ならその傾いた家が今にも大海原に進みそうで、希望を乗せた舟にも見えるからだ。
# by koyamamasayoshi | 2014-12-12 23:23 | 日記

12月1日

正午に上野での作品を積み終え、急いで東京駅へ向かう。
愛知の実家に一枚作品をピックアップするために、豊橋停まりのひかりに飛び乗る。ふと目が覚めると車窓は熱海駅を通過している。結構速いな、これならあと40分くらいで豊橋着くなと思い、母親に迎えにきてもらう電話をする。
高松に20時には着くとなると、逆算して滞在時間30分しかない。とりあえず自分の部屋だった所の過去の作品が積み重なっている中から必要な一枚を見つけ引っぱり出して確認する。その間に即席ら〜めんと卵焼きを作っていてくれた。それらをかき込み、引っぱり出した一枚を簡単な梱包をして駅に向かう。
こだま、名古屋でのぞみに乗り換え18時ごろに岡山に着く。ところが在来線瀬戸大橋線が規制値を超える強風の為14時ごろから運転見合わせている。参った瀬戸大橋が渡れん。ホームは立ち往生の利用客で溢れている。決断は早い方がいい。この強風だと今日中の運転再開は無理だろうから、選択肢は2つ。駅周辺の宿を取るか、新岡山港まで出て船で小豆島に渡り、頼りにさせてもらっている島の恩人Mさん宅に行くか。そう考えたらもうMさんとビールが飲みたくなって直ぐに各所に電話をかける。
まず、この強風で船が出るか。これは出るとの事。よし。次にMさんに情況を話し泊めていただけるか確認。よし。今日予約していた高松の宿にキャンセルを入れる。さっそく新岡山港行きバスを探すがもう終便が出たため、タクシーで向かう。最終の小豆島土庄港行き出港まであと50分。バスだと通常運行で港まで45分。混んでなけりゃ間に合う。割にスムーズに走り10分前に着く。港はものすごい強風。豊橋から持ってきた作品が板状のため風に持って行かれそうになる。4人の乗船客を乗せ出港。甲板に出て遠ざかる岡山の灯り、船のゆく先の島々を眺める。波高く強風だが月明かりが海上を煌煌と照らしている。船内で少し眠る。
船着き場で待っていたMさんは「ご苦労さん」と煙草を片手に笑顔で迎えてくれた。
# by koyamamasayoshi | 2014-12-09 19:36 | 日記


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