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どこかにいるひとりの絵描き

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或るひとりの絵描きのはなしを聞いた。
都内の美術系大学を10年前に卒業したあと、なにかのアルバイトをしながら兄と暮らし、郊外で絵を描き続けている。アトリエで彼は美しいと感じるもの、描きたいと思うものをただひたすらそこらにある紙片に描きつけている。それは世の中の流れ、社会の流れにまるで関係ないような、そして描くモチーフとしては凡庸で描きたいという衝動がなかなか生まれにくい、林檎などを描き続けている。彼にとっては紙片に描かれたものは習作で、それらは人に見せるようなものではなく、大切に纏められている。
大学の時の恩師が関係する公募展に年に一回油絵を出品する。それが彼の絵が世の中に顔を出す機会である。


時間の限り絵に向かい、人からしたら凡庸なモチーフをドローイングし続ける精神力はだれもが持っているものではない。
『或る「小倉日記」伝』の主人公のように、
「こんなものを描いていて何になるだろう。誰のためになるのだろう。時間の無駄じゃないのか。そんなことに時間を費やす自分は何のために生きているのだろう。」
という考えがよぎり次第に頭を支配し、自分の存在がぐらつき自信を失ってしまう。これを独りで抱え込み、それでも自分を信じ続けるには相当強靭な精神力がいる。その上理解者がたった一人でも居ないととても続けられないだろう。
絵描き仲間同士コミュニティが出来ていたり、大きな制作場所をシェアして、お互いの作品を批評しあい、芸術談義をする環境にいる絵描きたちは、この自己の存在意義を自問自答してしまうような深い闇の中に引き摺り込まれる時間を一時でも紛らわすことが出来るかもしれない。
しかし、絵描きに限らず、誰であれ結局は独りだと思う。
継続していくことが難しい芸術家(自称芸術家であっても)には、
これをやらねばならぬという使命感を持つ人物と、孤独に耐えられる精神力を持つ人物と、なーんにも考えない人物にしかなれないのかもしれないと思う。


常に自分の中にあるテーマに向き合ってライフワークを作り続けるひとがいる一方で、作品発表の機会ごとにテーマを考え新たな作品を生み出すひとがいる。
「制作期間」に入っている時は夢中で作品制作に没入していられるが、発表の機会が続かないと手が止まり考えばかりが押し寄せて不安定な精神状態になることがある。
発表の機会で左右されるような制作のモチベーションは、発表の機会の少ない自分には、山と谷の高低差のある線グラフのようなモチベーションになり、精神も参ってしまう。だが低調ではあるがずっと続くライフワークのような制作モチベーションは、本来自分が持っている制作衝動だし長く時間をかけて取り組むものだろう。二つを同時に育てていくことが大切だと思うが、心がうつろいやすい自分はなかなか思うようにいっていない。
それでも昨年からはそのライフワークのような制作として東京漂泊日記と題した木版の風景画を制作し始めた。やはり少しでも手を動かし続けていた方が考え込んでいるより精神状態がいい。

そんな作業をしてる時にふと、どこかにいる絵描きを想像する。
ひとりひとりの孤独の中で絵筆を握っている、どこかにいる絵描きを。
大学の時や、美術予備校でイーゼルを並べて絵を描いていた知人たち。
その当時の熱情の姿のまま思い浮かべる想像の中の彼らに、
そして郊外に居るという顔も知らない絵描きに励まされる。
by koyamamasayoshi | 2017-03-25 16:33 | 日記

ペッパーの孤独

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softbankの店内や家電量販店などの入口付近にヒト型ロボットのペッパー君が居る。人の声を認識して商品や店内の案内をするようだ。
昨年倉敷に行った時に、駅改札にペッパー君が居た。同行していた親が洗面所に行っている間、遠巻きにずーっと彼を見つめていた。子供が一回側に寄っただけであとは誰一人として彼に話し掛ける者はなかった。通り過ぎる人の視界に入り認識はされているようだけれど話し掛けられない。ロボットに話し掛けるという恥ずかしさが充満している空気の球体の真ん中に彼は立っているようだった。
彼は人の体温を認知するようで、穴ぼこのような眼で通り過ぎる人を顔を振って眼で追うのだ。駅改札で佇む彼の前を横切る多数の人を必死で眼で追いかけ顔がガックンガックン左右に振れている。感知してから時間差があるようで誰を眼で追っているのか、もはや分からない。しかし必死で顔を振っている。そして何故か上下にも顔を振り、何もない虚空を眺めているのだ。実に健気だなぁと思った。
来るか来ないか分からないものに対して頑張り続ける孤独。
梶井基次郎の本だったか、窓から見える闇の中にぽつんと街灯が誰一人歩いていない寂しい街道を照らし続けている…、という一文があった気がする。まさにその街灯の孤独というか寂寥はペッパー君の孤独と同じだと思う。
by koyamamasayoshi | 2017-03-19 20:45 | 日記

3/1

1954年、壷井栄原作、久松静児監督作、香川京子、杉葉子、田中絹代、轟夕起子、花井蘭子が5姉妹を演ずる、豪華共演映画「女の暦」。2015年、ラピュタ阿佐ヶ谷でこの映画を見逃して以来どこかで上映の機会を待っていた。
渋谷シネマヴェーラで新東宝特集の中にこのタイトルを見つけ出掛けた。1954年、同年に公開された木下恵介監督の「二十四の瞳」と同じ小豆島を舞台にしている。この5人の女優の美しさ、巧さ、可愛らしさ。香川京子と杉葉子が自転車に乗って小豆島の美しい風景を駆けてゆく。ああ、すばらしい、本当に素晴らしい。小豆島にまたふらりとゆきたくなる。昨年末、シネマヴェーラで同監督の「怒りの孤島」を上映していたらしい。また機会を待ちたい。
by koyamamasayoshi | 2017-03-01 22:32 | 日記


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