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屋根の君

2016/7/17
先々週末、近所のホームセンターへ作業靴を買いに行った。
デッキシューズが普段履きするくらい好きで、デッキシューズを一足買うつもりで行った。
一目で気になる作業靴を発見した。靴の見た目ではなく名前がとても気に入った。

「屋根の君 ブラック」
なんと詩的だろうか。
作業現場でこの靴を履いている男の子を、遠くからみつめる女の子の姿が浮かぶようだ。
二人称の靴は世界初じゃないかな。
ブラックは普通に靴のカラーリングである。

週明け現場に履いてゆき、職人さん達に自慢した。
ところがケータイで調べても「屋根の君」が見つからないらしい。
その代わりに同じ代物で「屋根や君 ブラック」が画像と共に見つかった。
一気にがっかりした。

ホームセンターの誤表示かと思い今日、買ったホームセンターへ行って確かめて見た。
「屋根や君 ブラック」
どうして見間違えたのだろう。頭が好きなように字を変換したのだろうか。
結局、一人称の靴だったが、俺が買った靴は「屋根の君」として履き続ける。
by koyamamasayoshi | 2016-07-17 18:25 | 日記

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昨年、群馬県の山奥、六合で長期の滞在制作をした。
秋口、闇夜からヒー…ヒー……キーンと寂しげな謎の音が聴こえていた。
となりの喫茶店の、のぼりが風ではためき、その支柱と鉄製ポールが擦れている音かもしれないと思っていた。

先先週、泊まっている奥多摩の宿坊の部屋の窓の外の、眼下に広がる霧が掛かった山々から深夜、その時と同じ謎の音が鳴り続けている。
「このブランコを漕ぐような音なにかね」と共に寝泊まりしている職人のDちゃんに訊くが「鹿じゃない?」と判然としない。
続けて「本当に誰かがブランコ漕いでるかもしれんよ」といわれ、「ゴンドラの唄」を口ずさみだした。

『い~のち~ みじ~かし~ こい~せよ~ おとめ~』

この想像は、参った。
途端に頭の中には、山の深淵の少しだけ開けた雑草生い茂るところに、ボロッボロの錆び付いたブランコがぽつんとあり、キー…キー…と哀しく漕ぎ続ける志村喬の姿が浮かんだ。
そしてお釈迦様の涅槃図のようにリスや猿や狸やら山中の動物が周りを囲んでさめざめと泣いている。時折雲間から漏れる月の光がその光景をぼんやり映し出す。


週末下山した時に、インターネットで調べたところ、志村喬ではなくトラツグミという鳥だという事がわかった。
幻想の妖怪、鵺(ぬえ)の正体ということだ。
たしかに真っ暗な山の月明かりしか頼りのない中で、この、体の芯から哀しくなるような正体の分からない怪音が聞こえてきたら、恐ろしくてしょうがない。
鵺は顔が猿で、体が虎、しっぽが蛇という想像画で描かれているが、トラツグミの全身の虎柄模様との類似は偶然だろうか。

先週、同じ部屋の窓から深夜この音を聴いていた。
調べずに、志村喬が正体であった方が、想像して楽しめたかもしれない。
でも、このトラツグミくんに興味が芽生えた。
他の動物や鳥がいっさい鳴かない深夜から明け方、仲間の位置を確かめ合う様に呼び合う健気さは、泪を誘う。
そしてその声音は、修験者が持つ鈴のようで、呼び合う事で何かの包囲陣を形成しているように感じ、呪術的、宗教的な妖しさを想像する。


今年の1月30日、国技館で豊真将の引退相撲、断髪式を観に行った。
俺は二階席の最奥の当日席からひとり観ていた。すり鉢状の館内の東西南北四方から、
「ホーーーマ ショーーーー」
という引退を惜しむ声が飛んでいた。
俺も
「ホーーーマ ショーーーー」
と叫んだ。その
「ホーーーマ ショーーーー」
という音の響きがとても呪術的だなあと思った。

宿坊の窓の外の黒いシルエットの山々を見ていて、
「ホーーーマ ショーーーー」とトラツグミが繋がった。
by koyamamasayoshi | 2016-07-17 18:22 | 日記

中年御三家

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3、4年前に小沢昭一さんが亡くなり、昨年末、野坂昭如さんが逝き、そして数日前、永六輔さんが逝ってしまった。
半世紀ほど年齢の離れたこのお三方の、ラジオを通して語られてきたことばによって、ものの見方、想像力、批評性、抵抗力、正しい日本語、反戦、反体制、文化、芸能、大人の稚気、かっこよさ等を学んできた気がする。

改憲勢力が過半数を獲得した参院選の日の訃報。
「二度と飢えた子供たちの顔を見たくない」と言い続けてきたお三人は、この国の行く先をどう見ているんだろうか。

小沢さんは、放浪芸や大衆芸の聞き取り取材などを書籍や音源にまとめていて文化芸能面に面白い遺産を多数残している。
一回だけ聴講したことのある見世物学会の顧問をしていたようだ。
ラジオでは「大沢遊里のゆうゆうワイド」内の「小沢昭一の小沢昭一的こころ」を大学浪人中に聴いていた。
口角が少し上がって笑うくらいの内容なんだがそこに、普遍性を感じるし、ほっとする安心感がある。
歌も歌う小沢さんの活動のなかで、一番好きな分野が映画俳優だ。
映画の中での演技がとってつけたような表層、借り物の演技ではなく、何十年も汗じみ油じみがとっぷり染み込んだ演技をする。
「須崎パラダイス赤信号」のそば屋の三吉、「幕末太陽伝」のアバ金、「豚と軍艦」のチンピラヤクザ、「にっぽん昆虫記」の韓国人、「越後つついし親不知」の留、「エロ事師たちより 人類学入門」のスブやん、「男はつらいよ」の常三郎。
どの役柄も「その」玄人にしか見えない。石原裕次郎や吉永小百合の演技にあまり興味はないが、小沢昭一の演技をみたいので観た事のない日活映画をもっと探して楽しみたい。

野坂さんの本業の小説は未だ一つも読んでいないが、ラジオ「土曜ワイド 永六輔その新世界」に出演した時や、その後出来た「野坂昭如さんからの手紙」のコーナーで聴いた野坂さんの言葉の数々と、テレビ討論をハマコー氏と遣り合う「知性とダンディズムを持ち合わせた暴走じじい」像におおきな憧れを抱いた。
とりわけ歌手野坂が大好きで、まじめに丁寧に気持ちを込めてとうとうと、時には外れて声が裏返って歌い上げる唄は、お経であり、呪文であり、ぼやきであり、お告げであり、御詠歌である。
そこに俺は男のかっこよさを感じた。
「黒の舟唄」「バージン・ブルース」「マリリン・モンロー・ノーリターン」が知られている代表曲だが、俺は「巡礼」「バイバイ・ベイビー」「心中にっぽん」などが好きだ。
「不条理の唄」は野坂さんが猥褻文書販売違反で起訴された時のライブアルバムだが、この中の曲間に野坂さんの弁説が入り、猥褻について語っておりとても面白い。
あと歌手野坂と同じくらいに、大島渚を殴りつける野坂さんがほんと好きだわ。

そんな野坂さんが亡くなった直後、永さんのラジオで追悼特番があった。
アシスタントの女性が悲しみに暮れる永さんに「永さん大丈夫?」と訊くと、「だめ」と一言言って番組が終わった。
「大丈夫」なんて言えない、言わない永さんがとても素敵に思えた。

ラジオこども電話相談室で「死んだ人たちはどこに行くの?」という疑問に答えた永さんの言葉を思い出して、時折、中年御三家の生き方を側で感じたい。
「あの世ってのは瞼の奥で生きている」
by koyamamasayoshi | 2016-07-17 18:01 | 日記

山で見た夢

先週、山で泊まっている宿坊で見た夢の内容。

どこかのスーパーマーケットヘ妻と出掛けた。
それ以前から夢の物語は続いていたようだけど朝、目が覚めた時、そこまでしか辿れなかった。
俺は用を足しにトイレを探した。
黒い服の清掃員が数人固まって掃除をしている先に男性用トイレがあるらしかった。
トイレをふさぐ様に固まっているので、手でやさしく払いのけようとしたら、俺の小指が清掃員の一人の目尻にうまいことひっかかってしまった。
清掃員に謝りつつ、お尻でドアを開けて後ろ向きでトイレに入った。
入ったらトイレなどではなく、わいわいがやがや大入りの大衆料理屋だった。

煙草の煙か、厨房の煙が客席まで来ているのか、料理の湯気か何だか分からない、もうもうと白いもやが店内に滞留している。
カウンター席で俳優の宇梶剛がひとりラーメンを美味しそうに食べていた。
テーブル席で美女がひとりで食事をしていて、向かいの席が空いているのだが、特に声を掛ける訳でもなく、他の空席を探した。

もうトイレは忘れ、なにか食べたい気持ちに変わっている。
ひと際賑やかな、テーブル席とカウンター席が合わさったような作りの一角の一席が空いていたのでそこへ座る。
カウンターの先に北林谷栄が二人居る。
ひとりは銭湯の番台みたいな台の上に、和装の上に割烹着を着て座布団の上で正座して、一言も声を発さない、置物のような腰の曲がった北林谷栄。
ただ、客の話をニコニコ聞いているだけの存在らしい。
もう一人は、踊り子の衣装のような派手なケバい洋装で、背筋のシャンとした北林谷栄。
こちらはおしゃべりで、ちゃきちゃきして、客の注文をきき、料理を客に出している。
双子の北林谷栄は超年期のいった看板娘で、その周りで馴染み客が賑やかにのんでいた。

話を聞いていると、今日が長年続いたこの店の最後の日だった。
しかもすでにラストオーダーの時間らしく、記念すべき最後の最後、俺はこの店の終わりに相応しい食べ物を壁の品書きを見て少し考えた。
宇梶剛の食べていたラーメンが美味しそうだったけど、目の前のおでんも美味そうだ。
迷っていると、側の席に居た、シティボーイズのきたろうのような、梅津栄のようなおっちゃんが、おでんならあるよと、持っているよれよれのリュックを、目の前に出し小物入れを開けて見せてきた。
中で埃くずにまみれた大根が見えた。
丁重に断ると今度は紙くずを開いてみせた。
そこには未来の宝くじの当選番号が書いてあるらしく、これでこの店の今までのツケを払うという。

可笑しなこの店を一緒に味わいたく妻に電話したところで、目が覚めた。
by koyamamasayoshi | 2016-07-17 17:48 | 日記

2016/7/10

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朝9時半、近所の小学校に参院選の投票に行った。
10時、駅前の歯医者で先々週抜けた歯の詰め物を、新しく作ってもらい、銀歯を填めてもらう。

中央線の車窓、千駄ヶ谷あたりの公園で、なにか白いもじゃっとしたものが一瞬見えた。雪男の下半身だけが砂場の側にあるように見えた。
御茶の水で途中下車し、神保町シアターで映画のチケットを買い整理券を貰う。

東京駅へ向かう車中、欧州系観光美女の二人と乗り合わせになった。
俺のとなりの空いている座席の上に何かをぽんっと放った。ケータイでも置いたかと思ったが東京駅でそのまま降りようとする。声を掛けようと置いた物をふっと見ると、本の帯だった。たしか「あの男を忘れない」と書かれていた。

東海道線小田原行きに乗り、大船駅で横須賀線に乗り換え鎌倉駅で下車。
俺には、あまり用のない、たいへんお洒落な街だ。町並みも特に興味はない。
今日最終日をむかえる古川さんの展示を見に来たのだ。
すれ違う人や車が、鎌倉で御座いと、言っても言わなくても、漏れ出ているように感じた。
作品を展示している古民家に着き近況を話し合った。
次々に知人が来てるようなので早々と遠慮し、せっかくここまで来たのだからと一人海を見に行く。
10分ほどで由比ケ浜海岸に着いた。海水浴をしている姿をぼーっと眺めた。
公衆トイレ備え付けのシャワーを浴びる水着姿のおねえさんの、滑らかな曲線の肌を張り付きつたう濡れた黒髪が、夏の光を受け、ぬるんとした生き物のようで妖しげで艶っぽかった。

鎌倉駅方面に戻り、参道は外国人観光客ばかりの鶴岡八幡宮へ向かう。
社殿の彫刻、彩色を眺め、そこから建長寺へ向かう。
いま、一緒に働いている職人さんが数年前に関わった現場ということで足を延ばした。
仏殿のご本尊、その周りの来迎図を表しているような彫刻が美しかった。
靴を脱いでそれをビニール袋に入れて方丈という建物に入り庭園を拝観する訳だが、俺の目の前にいた観光客は靴を履いた状態の上からビニール袋を両足履いて持ち手の部分を靴ひもでも結ぶ様に足の甲のところで結んでいた。その後直ぐに案内書きを見て誤りに気付いたらしく、通常の拝観方をされていた。

強い陽射しの中、北鎌倉駅まで歩く。
小津映画に映し出されていた駅舎が思い起こされた。木下恵介監督の「日本の悲劇」のラストもこのホームだったか。いや、熱海の方だったかな。

一時間半後、神保町シアターに戻る。芦川いづみ特集の第三弾をやっている。
「須崎パラダイス赤信号」「幕末太陽伝」を初めて見た時に、なんて可愛らしい女優さんなんだろうと、とたんに好きになった。
今回「硝子のジョニー 野獣のように見えて」の回を観た。
宍戸錠のキャラクターがいらない。やたらとわめき散らしたり、過剰で大きな動きをしたり、のそりのそりと動いたり、居姿がきまっていない。感情も怒りと悲しみ二種類のみの単純な男にしか見えない。
焦点が定まっておらず、結局何を言いたいのかよくわからない映画だった。
ただ芦川いづみは幅広い演技でとても楽しめた。

御茶の水駅に向かう暗がりの帰路、杖をついた盲目の若者に声をかけ、補助の手を差し伸べたおじいちゃんの姿を見て、数分前の映画で抱えたトゲトゲした気分が解消していった。
by koyamamasayoshi | 2016-07-17 00:21 | 日記


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by Koyama Shintoku

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