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木になった

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2015年9月20日
朝7時半、ビエンナーレ作家のスタンアンダソンさんの山道を、自分と同じ長期滞在で作品制作した作家の古川葉子さんと歩いた。現在その山道は立入り禁止になっている。しかし、かまうもんかと自己責任で登った。


スタンさんが5日前、突然亡くなった。定期検診で病院受付へ行ったその場で亡くなってしまったと聞いた。
スタンさんとは、数回しかお会いしてないが、泣けて泣けてしょうがなかった。
中之条から草津の間の暮坂峠の旧道、もう地元の人でも解らなくなってしまった山道を見付け出し、再興し、整備した芸術家だ。二度、スタンさんの道案内でその山道を歩いた。スタンさんの愛犬バリが先頭を歩くのだが、後続の我々は山歩きが不慣れで遅いと、こちらを気遣って振り返り、待っていてくれる。スタンさんは山道にせり出して障害になっている枝を折っては、歩きやすくしてくれた。そしてここに峠の茶屋があったとか、あの山は何山だ、とガイドをしてくれた。
自分の展示会場横にある十二の杜という山の神を祀った楢の巨木があるのだが、そこで毎月12日に祭りを行う。現在では、あまり村の人も参加しなくなったこの祭りにスタンさんは古くから参加し、杜の雑草を刈り、巨木に拝礼し、この消え入りそうな風習を大切にしていた。自分は滞在中、この十二様祭りに参加しスタンさんとお話をさせてもらう機会があった。


スタンさんの偉大な仕事を、も一度体感したく、足を踏み入れた。
暮坂峠の牧水茶屋裏手の山道を登り、高間大黒天という大黒様を祀った祠を目指し歩く。
登り口は急勾配ですぐに息が上がった。古川さんはハツラツとした健康体そのもので、ヒョイヒョイ登って行く。先に歩いてもらい、自分は自分のペースで付いて行った。
大黒天への道の中間辺りに、姿のいい木があった。二人で道を外れその木に向かって笹薮をかき分け近寄った。その木は地面から6、7メートル上へ伸びた所で二手にわかれ、その太い二本の枝が天に向かって伸びている。
その時、朝日が二股の中心に存在し、あたかも人が天に向かって両手を高く掲げ、お祈りしている様に見えた。自分は、その木がスタンさんに見えた。自分と古川さんは、木の胴に腕を回し、スタンさんに抱きついた。
山道を歩き続け、大きな岩の袂に高間大黒天は祀られている。木槌が奉納されて積み重ねられている。上の方は新しいが、下は苔むし、半分土に還っている。
牧水茶屋へ引き返す道の途中に遠く山々が見渡せる所があった。
古川さんに「大きい声出しませんか?」と訊くと「いいですね」と言った。
共に全身全霊全開の声で「スターーーンサーーーーン」と呼んだ。
自分がもう一度呼び、続けて古川さんがもう一度呼んだ。
声はこだまし、山々を包み、点に見える町にも届いた気がした。

山を下り、町へスタンさんの葬儀に参列した。
by koyamamasayoshi | 2015-09-20 20:36 | 日記

2015年9月15日

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朝8時半に展示会場へ行くと、受付ボランティアの方がすでに来ていて開場準備をしていてくれた。問題なくすべてのライト、映像の設定をしてくれていた。
閉場の時も立ち会ったが、何も言わずとも自分の作ったややこしいマニュアル書通りに閉場してもらえたので、この方には完全に任せられると感じた。

思えば、昨日別エリアで見た、映像が映っていなかったモニターは映っていなくて正解だったのかもしれない。
その作家は映像をメインにインスタレーション制作していて、そのモニターの真ん前に、おそらく使用可能な本物の便器があった。もしかしたらその便器の蓋を開けるか、便座に座るかでモニターに電源が入り映像が映し出されたのかもしれない。彼女だったらそこまでするかもしれないとふと思った。
知り合いの作家だっただけに映像が映っていなかったことに対しての、あの受付の対応に腹が立ったが、もしそういう装置だったら、言い過ぎたかなと朝方思い、すこし反省した。

11時頃まで会場で受付をし、午後はボランティアの方に会場を任せ、六合エリアの赤岩地区へ作品を観に行く。
その前に、宿舎として寝泊まりしている幼稚園の横の「かふぇ蔵」でランチを食べた。
きのこパスタとサラダと紅茶。
赤岩の入口の水車小屋の横で、タツオさんに会い、一時間くらいお話する。
自分は滞在制作中にいろんな方から聞き取り取材をしたが、タツオさんは、一番むかしの事を憶えていて、量も多く、俺好みな話をいっぱい知っていた。
湯本家の作品を改めて鑑賞し、湯本家の裏手の山道を祈りの道にかえた木村さんの作品を体験する。
稚産飼育所に初めて入った。シャクシャクシャクとお蚕さんがクワをもりもり食べていた。静止して食べ疲れているのもいた。
赤岩に以前から気になっていたが、ずっと閉まっている唯一の商店がある。ベンチと灰皿があったので煙草を吸っていると、入口扉、内側のカーテンの隙間からおばあちゃんが顔を覗かせた。会釈をすると扉を開けてお店を開けてくれた。
体を悪くしてずっと休んでいたと教えてくれた。オロナミンCを買い、飲みつつ、お店の品々に眼を配っていると奥の棚に古そうな包装紙がみえた。それを3枚買った。あと毛糸のクズみたいな紐があり、それを欲しいというと呉れた。
自分の会場受付ボランティアの方から電話があり、俺に会いたいという人が来たと連絡が入った。大学の時の同級生の小林さんだった。赤岩で小林さんと落ち合う。彼女は現在、栃木の温泉旅館で働きながら作家活動を続けている。俺は彼女が卒業制作で描いた自画像がとても好きで(最も好きかもしれない)、今でもその絵を憶えている。
遥々栃木からビエンナーレを見に来てくれて、こういう再会はなんとうれしいことか。

16時半、かふぇ蔵に届け物をしに戻る。
ここはバクダットカフェか!と、つっこみたくなる程、濃い常連の面子が居て思わず笑ってしまった。その面々の話が書ければ今度にまわす。
会場を閉め、また、かふぇ蔵に寄り、夕食としてカレー、煮物を食べる。
19時、疲れ果て寝る。
by koyamamasayoshi | 2015-09-16 01:17 | 日記

2015年9月14日

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朝8時半、自分の展示会場へ行き、受付ボランティアの方に開場の手順を教えながら開場準備をした。照明数が多く、映像作品が6つあるので1個の照明も抜ける事なく、この状態を会期終了まですべての来場者にお見せしたい。自分の開場に配置されているすべての受付ボランティアの方に開場手順を口伝し、教え込んでから安心して帰京したい。もとよりそういう心づもりだが、よりそれを考えさせられる出来事があった。

9時頃、受付ボランティアをやっていただいてる方と会場受付で来場者を待っていると、実行委員の方が応援に来てくれたので、2人にこの場を預けて、自分は中之条伊勢町エリア、伊参エリア、四万エリア、沢渡エリアの作品を見てまわった。
ある会場の映像作品の映像が映し出されていなかった。受付の人に映像が映っていないというと「昨日も点いてなかったからこれで良いんだと思う」といわれた。カチンときて「わからないんだったら作家本人か事務局に問い合わせた方がいいんじゃないですか」というと「どうやって点けたらいいのか…、リモコンも無いみたいだし」。「……、一生懸命作った作品が映ってなかったら、悲しみますよ。」と捨て台詞を吐き、後にした。
実際の所は知らない。映らないのかもしれない。映ってない状態が正解かもしれない。でも自分のところでこれをやられたらかなわない。
そういうことで自分は未だ、山の中に滞在している。

4エリア観て回った理由には、町からの順打ちで行くと、沢渡エリアの次ぎに自分の会場の暮坂エリアになる。来場者がどういう気持ちで自分の会場へやってくるのか知りたくて見てまわったのだ。

__________
中之条伊勢町エリアの琥珀という会場では、作品としてスナックを設えているのだが、その会場内で眼にとまったのは、ここの会場の家主さんが慰安旅行?をしていた30年前くらいの古いアルバムの数々だ。その上、ページの中にはいい写真ばかり収まっていた。
中之条駅近くに文房具屋がある。一月の鳥追い祭りの日にリサーチで中之条を訪れた時に寄り、おばあちゃん店主と話し込み、売っていた杖を一本買った。どうだろう、憶えててくれてるかなぁと思いつつ入ると、山に籠って制作するって言ってたお兄さんだよね、と憶えていてくれた。おばあちゃんと会話しつつ、店の品々に眼を配っていると、昆虫採集キットという箱が眼に入った。即、昆虫採集キットを買い占め、それと写生用の水入れを買った。店外に出て立ち去る自分に手を振ってくれた。とても嬉しい再会。
伊参エリアから四万エリアへ行く道に迷い、彷徨っていると、青田の広がる開けた所にきた。そこに「鳥獣供養塔」の碑があったのだ。鳥からの目線で3ヶ月作って来たのでこの碑を見て、少しだけ人間側に引き戻った。同時に、昔の鳥追い祭りはもっとずっと乱暴だったんじゃないかと考えてしまった。
沢渡エリアの沢渡ギャラリーでやっている展示は一見解らなかったが、説明文を読むととても興味深く、ぐっと惹き込まれた。
__________

長い長いビエンナーレの路を巡って、16時45分、暮坂の自分の展示会場にやって来た。
思ったのは、作品をいっぱい観るって疲れるということ。
来場者はとてもくたびれた状態でやってくるのかもしれない。

明日は六合エリアの赤岩地区から逆打ちして、そちらからの来場者の気分を味わってみようか。
by koyamamasayoshi | 2015-09-14 21:42 | 日記

出来上がった巣 すでにあった巣

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2015年9月12日
本日、なんとか作品を公開する事が出来た。
前夜、最終チェックで全部の照明ライトを点け、一人鑑賞している中、2灯照明電球が切れていることに気付いた。いろいろと思い当たる所に連絡したがなく、朝ホームセンターへ行くかと諦めていたところ、深夜事務局から2灯都合つくという連絡があり一安心して寝た。
朝、オープン前に電球を交換し、展示会場横の十二の杜という山の神様を祀る楢の巨木へお参りし、作品の一ヶ月間の無事をお頼み申し上げた。
9時半、自分の展示会場の家主さんと赤岩地区の展示会場の湯本家へ行った。家主さんとここへ来た理由は、自分と同じ長期滞在だった作家の古川葉子さんが展示していて、我らが滞在中家主さんから野菜や、調理した物を沢山いただき親しくなったからである。古川さんは木彫の作家である。2、3度作業中の作品を見たきりで完成したものは今日初めて見た。3ヶ月の悲喜こもごものノミの一打一打が自分には感じられた。あと怒りもか。それに加えこの地で、縄を綯う技術を古老に教わったらしくワラ、クワの皮を綯ったもので、木彫を支え、人を寝転ばせ支え、空間を支えている。木彫の作品を喰うことなく、この地の手技を取り入れた事で作品全体に山で暮らす人間の営みの痕跡と深みを与えていた。
湯本家は3階建ての旧家で、ここでは9人の作家が展示している。2階に展示している小林正樹さんの作品で、とても気になったものがあった。それは大戦中の盃である。盃の内側に軍艦などが描かれ、ひっくり返したものもあり、それをみると鉄兜のようで、そのてっぺんにゼロ戦が立体的に浮きだしている。盃は膳の上に円を描くように配置されており、中央にとっくりが置かれていて、そこに小林さんの彫金、鍛金で制作した四葉のクローバーの一輪挿しが活けてある。四葉の中の一葉にドクロが刻み込まれている。
きのこ雲だと思った。形はきのこ雲ではないが、ドクロを見た瞬間、タツノコプロの爆煙を連想したからだ。
その他の作品でとても気になったのは、栃岡陽麻里さん、冨安由真さんの作品空間内に置かれていたクワヅルである。これは滞在中追い求めていたもので、昔、山仕事で使う道具の一つである。古老から名前だけは訊いていたがようやくお目にかかれた。一般的な鍬の構造であるが、土をかく鉄板部分がやたらと長い。刃の反対側に板が付いていてここを踏み込み、ぐっと土中深く差し込めるようになっている。
10時半、赤岩地区のお祭りに手伝いで参加し、13時半頃までひたすら、にくとモツを焼いた。
家主さんの娘さんに作品の一部が倒れていると教えてもらい、展示会場までの山道をぶっ飛ばした。

今回の作品は一部、接着剤や釘を使用せず、組んであるだけの状態のところがある。被害は少なかったが、今後もありそうだと感じた。対策を打たなければならないだろう。
15時半、山を少し下った所の宿舎の横にあるかふぇ蔵というカフェへ行き、アイスティーとハンバーグカレー、すいとんをいただいた。ここの女将さんにも滞在中、差し入れを沢山貰いお世話になった。
3時間ぐらい話をする中、大戦中の紙類を見せてもらった。とても興味深いものが続々出て来たが数行でまとめるのはもったいないので今度書き記したい。小林さんの作品で出て来た盃がここにあったものと聞いてなるほど頷けた。
18時半閉場した自分の会場へ様子を見に行く。
宿舎へ戻り、ビールを飲みながら男はつらいよを観て静かに開幕を祝う。

台風が関東を北へ突き上げて行った日、雨漏り対応で屋根裏にはじめて上がった。雨音が激しく屋根を叩く中、懐中電灯の灯りの先に直径50cmくらいのこんもりした巣があった。大きさにもビックリしたが、先に棲んでいるものが居た事にとてもビックリした。おそらく屋根や壁をたまに来ては連打していたキツツキの巣だろう。
巣穴から入るものだけで拵えるという、まだアイデアにも満たない作品へ繋がりそうな言葉が頭に浮んだ。
by koyamamasayoshi | 2015-09-12 21:47 | 日記

中之条ビエンナーレ2015

中之条ビエンナーレ2015  
群馬県吾妻郡中之条町 町内エリア56ヶ所 参加アーティスト数163組

[展示会場]沢渡・暮坂エリア 十二みます
[展示期間]2015年9月12日(土)〜10月12日(月・祝)の31日間 9:30-17:00 会期中無休
[パスポート]当日1000円(前売り800円)/高校生以下鑑賞無料(ガイドブック別売り700円、パスポートケース400円)
[アクセス]中之条ビエンナーレHPをご参照下さい。http://www.nakanojyo-biennale.com
尚、私の展示会場へ行く公共機関はありません。お車、レンタカー、タクシーなどでお越しいただければと思います。展示会場を巡るバスを会期中運行するということなので、ご利用される場合は中之条ビエンナーレHPをご確認下さい。

作品タイトル「逃走の巣」
中之条の鳥追い祭り。追われた鳥はどこに行くのだろう。逃走の先で何をしているだろうか。
幕末では、蘭学者の高野長英が蛮社の獄から逃走し、六合村で身を潜めていたという。
この二つのキーワードが結びつき、私に「追われる者」「マイノリティの魂に宿る青白い炎」というテーマをもたらした。
私は約3ヶ月の滞在制作において「追われた者」の精神を身に纏い、空想の中の彼らの、そして私自身の「潜伏先」を制作した。鳥が小枝や羽根などで巣を作るように、私は消え入りそうな小さな声や言葉を拾い、自身の巣を紡いだ。

初日の12日には限定120部、作品タイトルを刷ったお札の粗品を差し上げたいと思います。
とても便の悪い所ではございますがお越しいただければ幸いです。
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by koyamamasayoshi | 2015-09-11 03:31 | 展覧会


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