9/18 奥能登十六夜日記(1)

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台風14号の予定針路が南下した影響で東京は朝から雨が降っていた。
能登半島の先端に向かって車を走らせ、正午過ぎに有磯海SAに寄り昼食をとった。
2017年、群馬の製材所にて半ばまで制作した作品を珠洲へ運んだ時もここでラーメンを食べていた。
昨夜は眠れなくて明らかに睡眠不足で幾つかのPAで仮眠をとったが、いつ迄もぼんやりしていた。
のと里山海道に入った辺りからようやく眠気よりも懐かしさが勝り、風景を楽しめるようになった。
のと里山空港の分岐点で輪島方面に向かい、その先で広々とした鈍色の険しい表情の日本海に再会した。途中雲が抜けて青い空が顔をのぞかせていたが、ふたたび纏わりつくような小糠雨になった。
8時間運転し続けてようやく今日明日の宿「海楽荘」に到着する。
部屋の名前がいちいち良い。自分の部屋は「入舟」で向かいの部屋は「聴濤」だった。
チェックインするなり、直ぐに浴場に行って風呂に浸かり、疲れを癒す。そして部屋に戻って布団の中へ潜り込み、意識を失うように眠った。
夕食後、雨があがったので宿の目前にある押し寄せる波濤と、潮風によって舞い上がる垂水の滝を懐中電灯を手に見に出掛けた。
黒い海の中にいくつも白い波頭がたち、冷徹に蒼白く光るその波に混じって、何か得体の知れないものが海から這い上がってきそうだ。
遠く水平線の上に、七ツ島のぼんやりと温かみのある灯台の灯りがちらちら見える。
ライトアップされた垂水の滝の迫力にしばらく立ち尽くし眺めた。ごつごつした岩肌から海へ流れ落ちる滝が、あたかも白い血液が噴き出すかのような生命としての脈動を感じる。そのうえ、闇の中で照射され白く発光した滝は、まるで胸部のレントゲン写真のようでもあった。
全身から体温が押し出されて、霊気のようなものが入れ替わりに体の中へ入ってくるようでゾクっとする。
滝のとなりの旧トンネルは入口の少し先で大きな鉄扉によって閉ざされていた。何かを封印しているようで、ここへはとても近寄りがたい。
夜空に浮かんで流れる雲の隙間から煌々と光り輝く月と星が見えてきた。その月明かりが、海と滝の陰影をより濃いものにしていた。


by koyamamasayoshi | 2021-09-18 21:39 | 日記


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