中年御三家

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3、4年前に小沢昭一さんが亡くなり、昨年末、野坂昭如さんが逝き、そして数日前、永六輔さんが逝ってしまった。
半世紀ほど年齢の離れたこのお三方の、ラジオを通して語られてきたことばによって、ものの見方、想像力、批評性、抵抗力、正しい日本語、反戦、反体制、文化、芸能、大人の稚気、かっこよさ等を学んできた気がする。

改憲勢力が過半数を獲得した参院選の日の訃報。
「二度と飢えた子供たちの顔を見たくない」と言い続けてきたお三人は、この国の行く先をどう見ているんだろうか。

小沢さんは、放浪芸や大衆芸の聞き取り取材などを書籍や音源にまとめていて文化芸能面に面白い遺産を多数残している。
一回だけ聴講したことのある見世物学会の顧問をしていたようだ。
ラジオでは「大沢遊里のゆうゆうワイド」内の「小沢昭一の小沢昭一的こころ」を大学浪人中に聴いていた。
口角が少し上がって笑うくらいの内容なんだがそこに、普遍性を感じるし、ほっとする安心感がある。
歌も歌う小沢さんの活動のなかで、一番好きな分野が映画俳優だ。
映画の中での演技がとってつけたような表層、借り物の演技ではなく、何十年も汗じみ油じみがとっぷり染み込んだ演技をする。
「須崎パラダイス赤信号」のそば屋の三吉、「幕末太陽伝」のアバ金、「豚と軍艦」のチンピラヤクザ、「にっぽん昆虫記」の韓国人、「越後つついし親不知」の留、「エロ事師たちより 人類学入門」のスブやん、「男はつらいよ」の常三郎。
どの役柄も「その」玄人にしか見えない。石原裕次郎や吉永小百合の演技にあまり興味はないが、小沢昭一の演技をみたいので観た事のない日活映画をもっと探して楽しみたい。

野坂さんの本業の小説は未だ一つも読んでいないが、ラジオ「土曜ワイド 永六輔その新世界」に出演した時や、その後出来た「野坂昭如さんからの手紙」のコーナーで聴いた野坂さんの言葉の数々と、テレビ討論をハマコー氏と遣り合う「知性とダンディズムを持ち合わせた暴走じじい」像におおきな憧れを抱いた。
とりわけ歌手野坂が大好きで、まじめに丁寧に気持ちを込めてとうとうと、時には外れて声が裏返って歌い上げる唄は、お経であり、呪文であり、ぼやきであり、お告げであり、御詠歌である。
そこに俺は男のかっこよさを感じた。
「黒の舟唄」「バージン・ブルース」「マリリン・モンロー・ノーリターン」が知られている代表曲だが、俺は「巡礼」「バイバイ・ベイビー」「心中にっぽん」などが好きだ。
「不条理の唄」は野坂さんが猥褻文書販売違反で起訴された時のライブアルバムだが、この中の曲間に野坂さんの弁説が入り、猥褻について語っておりとても面白い。
あと歌手野坂と同じくらいに、大島渚を殴りつける野坂さんがほんと好きだわ。

そんな野坂さんが亡くなった直後、永さんのラジオで追悼特番があった。
アシスタントの女性が悲しみに暮れる永さんに「永さん大丈夫?」と訊くと、「だめ」と一言言って番組が終わった。
「大丈夫」なんて言えない、言わない永さんがとても素敵に思えた。

ラジオこども電話相談室で「死んだ人たちはどこに行くの?」という疑問に答えた永さんの言葉を思い出して、時折、中年御三家の生き方を側で感じたい。
「あの世ってのは瞼の奥で生きている」
by koyamamasayoshi | 2016-07-17 18:01 | 日記


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